2005年度終了分

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12月8日(木) 15:00-16:00

場所: 三鷹解析棟2階TV会議室

発表者: 小林千晶(国立天文台)

タイトル: 極超新星を導入した、銀河系における、CからZnの進化

要旨:
超新星の光度曲線やスペクトル解析から、II型超新星のエネル
ギーは10^51ergと均一ではなく、十倍以上明るいものがあること
が明らかになった。つまり極超新星から多くの鉄が放出される。我々
は、金属量に依存した梅田・野本モデルを用いて、典型的な極超新星の
元素合成を計算した。II型超新星のうち、20太陽質量以上
の半分くらいが極超新星になると思うと、太陽系近傍におけるC
からZnの組成進化を、ほぼすべてのalpha元素、odd-
Z元素、鉄属元素、亜鉛について、非常によく再現することができる。
最近の観測で示されたバルジとthick diskの組成進化は、太陽系
近傍と違っていて、これから形成タイムスケールが議論できる。この極
超新星の効果を宇宙論的シミュレーションに導入して極超新星頻度史を
計算すると、観測されるGRB頻度と矛盾しない。(シミュレー
ションの詳細は翌9日の談話会でお話します。)

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11月17日(木) 15:00-16:00

場所: 三鷹解析棟2階TV会議室

発表者: 青木和光(国立天文台)

タイトル: Lithium isotopic abundances in metal-poor halo stars

概要:
Asplund et al. astro-ph/0510636

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10月27日(木) 13:30-14:30

場所: 三鷹解析棟2階TV会議室

発表者: 竹田洋一(国立天文台)

タイトル: ヒアデス星団主系列星の高分散分光

概要:

ヒアデス星団は我々に最も近い散開星団で(中心は〜45pc)明るいので
岡山188cm鏡のような中口径望遠鏡では主系列星を早期型から晩期型まで
カバーして研究できる唯一の星団です。また星流視差やヒッパルコス衛星で
距離等のパラメータも大変精度良く決まっており、年齢も約6億年と
若過ぎず古過ぎず落ち着いた大人の星で構成されているので、この星団の
星々を包括的に研究することは恒星内部構造論の妥当性や組成解析の
精度を見積もるための格好の試金石になっており、この意味で恒星物理学の
基準的存在と言えます。我々はこれまで岡山観測所の分光器を用いて
A型からG型までのヒアデス主系列の星を観測し、特に軽元素
(C,N,O,Liなど)の組成に着目して恒星外層で起こる組成変化の機構に
関する研究を行ってきました。今回はその成果についてまとめてお話し
したいと思います。

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10月13日(木) 15:00-16:00

場所: 三鷹解析棟2階TV会議室

発表者: 神戸栄治(防衛大)、安藤裕康(国立天文台)

タイトル: 名器HARPSの探訪の旅 ー身支度編ー

概要:

Geneva, Haute Province, Paris を訪ね、1m/sの精度を誇る
名器HARPS開発者にその創意と工夫を聞いてくる。また、
Observatoire de Haute Province で現在立ち上がりつつある
SOPHIEを見学しその特徴を調べる。

 それに先立ち、これまでの視線速度の精度追求の流れを
レビューする。 それを基にどのような問題点が克服され
どのような点が残されているかを整理して提示し、みなさんから
コメント、意見を伺いたい。

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9月8日(木) 13:30-14:30

場所: 三鷹解析棟2階TV会議室

発表者: 鈴木尚孝(カリフォルニア大学サンディエゴ校)

タイトル: Listening to the Harmony of the Universe

概要:

Ly alpha Forest から、宇宙論パラメータを測定する手法と最近の動向について
下記の論文をまとめてご紹介します。

1) Quasar Spectrum の数学的 分類方法
2) D/H Abundance から Baryon Asymmetry を測る
3) Ly alpha forest から 密度ゆらぎの成長を測る

これらを測定するにあたって、以下の論文には書かれていませんが思いもかけない
数々の困難がありました。裏話などもご紹介したいと思います。

astroph/0503248 : Suzuki "Quasar Spectrum Classification with PCA"
2005 MNRAS 361, 70 : Jena et al "A Concordance Model of the Ly alpha Forest"
2005 MNRAS 360, 1373 : Kirkman et al "The HI Opacity of the IGM"
2005 ApJ, 618, 592 : Suzuki et al "Predicting QSO Continua in the LyA Forest"
2004 ApJ, 617, 1 : Tytler et al "Cosmological Parameters"
2003 ApJS, 149 1 : Kirkman et al "Baryon Densityh from Q1243"
2003 PASP, 115 1050: Suzuki et al "Relative Flux Calibration of Keck HIRES"

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9月1日(木) 13:30-14:30

場所: 三鷹解析棟3階TV会議室

発表者: 青木和光(国立天文台)

タイトル: 大望遠鏡の高分散分光器(計画)の状況について

概要:
ELTの装置案のひとつとして、高分散分光器の議論が始まっているが、
その材料として、既存の大望遠鏡の分光器の現状について報告する。
30m(超)級望遠鏡にむけて提案されている装置計画についても紹介する。

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8月4日(木) 14:00-15:00

場所: 岡山観測所会議室
    TV中継:三鷹解析棟2FTV会議室

発表者: 佐藤文衛(国立天文台岡山観測所)

タイトル: 超巨大コアを持つ灼熱惑星の発見

概要:

現在アメリカの研究者と共同でHDSを用いた系外惑星探索を行っている。
今回は、先日発見したホットジュピターについて紹介する。この惑星は
周期2.87日、質量1.2M_SATでG0IV型星HD149026の周りを回っており、
その後の測光観測でトランジットも検出された。トランジットの深さは
0.003等で、惑星の半径は0.86R_SATと見積もられる。つまり、土星より
重いが一回り小さい惑星であり、理論モデルとの比較の結果、中心に
地球質量の70倍もの巨大コアをもつ可能性が示唆される。


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7月28日(木) 14:30-15:30

場所: 岡山観測所会議室
    TV中継:三鷹解析棟3F第2TV会議室

発表者: 泉浦秀行(国立天文台岡山観測所)

タイトル: BM Gemの伴星は主系列星だろうか?

概要:

現在投稿・改訂中の論文で、シリケイト炭素星BM Gemに
 伴星の存在を結論し、おそらく主系列星と考えられるが、
 白色矮星の可能性も捨てきれないと論じた。ところが、
 ほぼ同じ議論がMira(o Ceti)の伴星について以前になさ
 れていることが分かった。Miraの伴星に関する一連の研究
 を紹介し、BM GemとMiraの比較を行う。また、観測的に
 いくつか共通点の見られるR CrB星との比較も行ってみる。

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7月14日(木) 13:30-14:30

場所: 解析棟3F第2TV会議室

発表者: 冨永 望(東京大学大学院理学系研究科)

タイトル: 種族III超新星における元素合成と金属欠乏星の元素組成

概要:

第一世代星の超新星爆発によって汚染されたガスから形成されたと
 考えられる金属欠乏星の元素組成が近年多数観測されている。
 そこで、種族IIIの超新星爆発と元素合成を計算し、金属欠乏星の元素組成が
 それらで再現できることを示す。また、観測的に [X/Fe] vs. [Fe/H] に
 トレンドがあることが指摘されているが、そのトレンドが超新星の
 親星の質量、爆発エネルギーの違いによって説明できることを示す。

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6月27日(月) 13:30-15:00

場所: 解析棟2FTV会議室

発表者: Xiaojun Jiang (中国国家天文台主任研究技師)

タイトル: An overview of Xinglong Observatory

発表者:  Junjie Wang (中国国家天文台教授)

タイトル: What triggered star formation in IRAS04000+5052?

要旨:

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6月16日(木) 14:00-15:00

場所: 解析棟3F第2TV会議室

発表者: 梶野 敏貴(国立天文台)

タイトル: 「ビッグバン & 超新星元素合成と宇宙論」

要旨:

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6月9日(木) 14:00-15:00

場所: 解析棟3F第2TV会議室

発表者: 安藤 裕康(国立天文台光赤外研究部)

タイトル: 「5分振動から探る太陽内部回転構造」

要旨:

20050609.pdf

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5月19日(木) 13:30-14:30

場所: 解析棟3F第2TV会議室

発表者: 長尾 透(国立天文台光赤外研究部 / アルチェトリ天文台)

タイトル: 「Innermost Part of Narrow-Line Regions in AGNs」

要旨:
AGN のスペクトルに見られる幅の狭い輝線は狭輝線放射領域(NLR)と呼ばれる電離ガス領域から放射されていますが、このNLRは空間的に分解して観測ができる程度の広がりを 持っているために形態や構造の研究が昔からよくなされてきています。また、可視域に豊富な禁制線が存在するために、物理状態や化学組成についても理解が進んできています。以上の理由からNLRについては既に十分な理解が得られていると思われがちですが、空間的に分解できない程の中心核近傍で NLRがどのような性質を持っているかに関しては、いまだ理解が進んでいません。こういった中心核近傍の様子を知る事はNLRを正しく理解するために不可欠であるのみならず、AGNを統一的描像で捉えることを目指す「AGN統一モデル」の検証という観点からも極めて重要です。このような情勢を踏まえ今回のセミナーでは、まず光電離モデル計算にもとづくNLR最奥部の研究について紹介し、続いてこのモデルの Subaru/HDS を用いた観測的検証について紹介します。時間に余裕があれば、高分散分光観測と相補的な意義を持つ偏光分光観測による研究についても紹介をいたします。

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3月22日(火) 13:30-14:30

場所: 解析棟2FすばるTV会議室

発表者: 三澤 透(Penn State)

タイトル: 「A Census of Intrinsic Narrow Absorption Lines」

要旨:
クェーサーHS1603+3820(z_em=2.542)は非常に多くの吸収線を持ち、単位赤方偏移あたりのC IV吸収線
の数密度 (dN/dz~12) は同じ赤方偏移における平均的な数密度(dN/dz~2.45)を大きく上回る。これら全て
が必ずしもクェーサーと我々の間に存在する銀河・銀河間ガスによる吸収線(以下「介在吸収線」)というわけ
ではなく、その一部はBAL(Broad Absorption Line)のようにクェーサーに直接付随した吸収体によるもの(以下
「付随吸収線」)である可能性がある。付随吸収線を介在吸収線から区別するには2つの方法:(1)吸収線
の時間変動、(2)吸収体の背景光源に対する部分掩蔽、が有効である。そこで我々はすばる望遠鏡および
高分散分光器(HDS)を用いてこのクェーサーを1.28年(クェーサー静止系で0.36年)の間隔を開けて2回観測
した。その結果、クェーサーからの視線速度差がDelta_v=8,300-10,600km/sにある最も密集度の高いC IV
吸収線群が、時間変動と部分掩蔽の両方の性質を持つことが分かった。また掩蔽率自身も時間変動するこ
とを確認した。この時間変動の原因がクェーサー周辺での電離状態の変化によるものであると仮定すると、
吸収体の電子密度の下限値および背景光源からの距離の上限値を設定することができる。あるいは塊状
の吸収体が光源の前を横切ることに由来すると仮定すると、視線方向に対する横断速度は8,000km/s以上
であり、さらに吸収体が系に重力的に束縛されていると仮定すれば、光源からの距離は3pc以下であると評価
できる。また降着円盤の力学モデル(Murray et al. 1995)と角運動量保存則などを考慮すると、光源からの
距離に対してより厳しい制限(r<0.2pc)を設けることが可能となる。今回見られた吸収線強度の時間変動は
非常に大きく(W_obs=10.4 -> 19.1A)、将来BALに進化する可能性についても考察した。
さらに、同様の解析をKeck+HIRESで取得された、ほぼ同様の分解能を有する40個のスペクトルにも適用し、
少なくとも17個のIntrinsic NALを検出した。これらの結果をふまえた統計的解析の途中経過、および将来的
展望についても報告する。

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3月10日(木) 13:00-14:00

場所: 解析棟2FすばるTV会議室

発表者: 青木和光(国立天文台)

タイトル: 「軽い中性子捕獲元素の起源」

要旨:
太陽系における中性子捕獲元素組成を質量数の関数としてプロットしてみると、
中性子の魔法数に対応して3つの組成ピークがある。そのうち、最も軽い元素(原
子番号では50以下)の起源は、重いほうに比べてよくわかっていない。すばる/
HDSの試験観測期に取得されたデータの解析から、銀河初期に軽い中性子捕獲元
素を大量に供給する元素合成過程が存在し、それがr-プロセスの一種と考えられ
ることがわかってきた。さらに、その過程による元素合成の結果を顕著に示して
いる星の元素合成パターンを詳しく調べる試みも始まっている。セミナーでは、
今後の観測計画についても紹介する。

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2月24日(木) 13:30-14:30

場所: 解析棟2FすばるTV会議室

発表者: 川野元聡(国立天文台)

タイトル: 星間吸収中の85Rb/87Rb同位体比

要旨:天然のルビジウム(Rb,Z=37)は質量数85と87の二種類の
同位体から成り、地球上においてはその同位体比(85/87)は2.59である。
(87Rbは長寿命の放射性元素であり、半減期5e10年で87Srに崩壊する。
これはRb-Sr法と呼ばれる年代決定法に使われている。)
Rbは中性子捕獲によって作られると考えられているが、85Rbは
主としてr-processで、87Rbは主としてs-processで合成される。
これに加えて、Z=36のKrでs-processの分岐があり、それぞれの
生成物が85Rbと87Rbになる。
Rbの組成比および同位体比を地上以外で測定する試みは、1970年前後
から始められたようだが、これまでに測定されている例は数少ない。
Federman et al.(2004)で星間吸収中のRbの吸収線を使った85/87比が
報告されたのをきっかけにHDSで観測されたデータを見直した結果、
HD169454の方向の吸収中にRb7800Aを見つけることができた。このデー
タに対してFedermanらと同様の解析を行なった結果を報告する。

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2月17日(木) 13:30-14:30

場所: 解析棟2FすばるTV会議室

発表者: 神戸栄治(防衛大)

タイトル: zeta Ophの非動径振動についてーMOST星震学衛星と地上高分散分光の共同観測ー

要旨 : 早期型星zeta Ophは、星震学的な研究が有望視されて
いる、beta Cep型の非動径振動をしていると考えられている
星である。また、この星は、数年から数十年周期で質量放出が
起こるBe星と呼ばれる星の仲間であり、この星の質量放出周期
やその結果形成される星周ディスクの寿命が短いことから、
その質量放出機構を解明するのに適した星として、古くから
注目されてきた。
この星に対して、2004年5月末から3週間にわたって、MOST
星震学衛星(精密測光)と複数の地上天文台(高分散分光)と
の間で同時観測を実施し、これまでにない多数の振動モードを
検出することができた。そこで、今回の発表では、(1)ぐんま
天文台GAOESでの観測(今回が最初の本格的な利用となった)、
(2)現在投稿中の論文(Walker et al. 2005)に基づく初期成果、
(3)今後の解析やサイエンスの方針の議論、などを中心に、
この共同観測について報告したい。

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2月10日(木) 13:30-14:30

場所: 解析棟2FすばるTV会議室

発表者: 野口邦男(国立天文台)

タイトル: 日中共同研究この1年

要旨 : 2000-2002年度の間、日本学術振興会からの支援
   を受けて、「高分散分光に基づく日中共同研究」を進めてきた。
   その後、学振からの支援は途絶えたが、共同研究は続いている。
   この約1年間の間の共同研究の進捗状況を報告する。
   発展著しい中国国家天文台興隆観測所の近況も伝える。
   内容は以下の通り。
   (1) 訪中、訪日の記録
   (2) 観測を基盤とした日中共同研究の進展
     2-1 OAOへの観測申請
     2-2 興隆観測所への観測申請
   (3) 観測スケジュール
   (4) CES−CCDのグレードアップ
   (5) CES用のI2セルフィルターの制作、設置、試験観測
   (6) カセグレン焦点からの光ファイバーによるCESへの
       光導入
   (7) 興隆観測所のNew-Guesthouseの完成
   (8) LAMOST建設の進展

20050210.pdf

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1月27日(木) 17:00-18:00

場所: 解析棟2FすばるTV会議室

発表者: 藤本正行(北海道大学)

タイトル: 超金属欠乏星の進化と種族III星の探査

要旨: この10年くらいの間にHKsurvey や Hamburg/ESO survey と
その後のfollow-up観測によって超金属欠乏星([Fe/H}<-2.5)が多数発見されてきた。
これらの恒星は、種族IやIIの恒星とは違った特異な傾向を示すことが知られ、
銀河系の形成過程、初期進化についての情報の源をもたらすと期待されている。
しかし、そのためには、これらの恒星が誕生以来の長い生涯の間に蒙った外部的、
内部的な変遷過程の理解が鍵となる。北大のグループでは、低質量超金属欠乏星の
進化を研究してきたが、超金属欠乏星の観測的な特性の理解に関してのこれまでの成果を紹介する。
特に、Hanburg/ESO surveyがもたらした[Fe/H]<-5の恒星が種族III星である可能性について議論する。

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