かぐやによる月縁を考慮した2012年金環日食予報

 
  2012年5月21日の金環日食は北限界線が日本列島を横切っている. その北限界線の位置が,たとえば 国立天文台暦計算室のサイトNASA Eclipse Web Site で約2.7kmの差があり,混乱を与えている.この差の原因ははっきりしていて, 計算に用いるパラメータの採用値の違いによっている. 予報の差の原因については,こちらを参照のこと. いずれにしても,これらの予報では月縁の凹凸が考慮されていない.正確な予報を 出すためには月縁の凹凸の補正をしなければならない.ここでは, 日本の月周回衛星「かぐや」に搭載されたレーザ高度計で得られた 精密な月地形データを用いて,金環日食のときの月縁の凹凸を予報し, それを用いて求めた金環日食の起きる時刻や限界線の位置を提供する.

日本の主要地点における日食予報
金環日食時の月縁

この月縁に金環食中心線の近くの東京と金環食限界線近くの京都で見たときの 太陽の縁の位置を書き加えたものが次の2つの図である (東京京都). 東京については,金環食の始めと終わりの頃について5秒毎に, 京都については,食の最大の頃について10秒毎に,太陽の縁の位置を示している. 月縁部分を拡大しているため,太陽の曲率が実際とは反転していることに注意してほしい. 月縁の凹凸によって,金環食の始めや終わりの頃にはベイリーの数珠と呼ばれる現象が 見られる.このような図によって,ベイリーの数珠が現れたり消えたりする 時刻や位置を予報することができる.

「かぐや」の月縁を用いて求めた北限界線の予報位置

この限界線の位置を地図上に示したものは せんだい宇宙館のサイト に掲載されているので,そちらをご参照ください.

 本研究の内容について,詳しくは, 国立天文台報に掲載された論文 2012年5月21日の日本における金環日食限界線 を参照されたい.

 本研究の内容は,2012年3月19日から龍谷大学(京都市)で行われた 日本天文学会春季年会において発表され,その前日の3月18日には京都大学 (京都市)にて記者発表が行われた。


相馬 充(国立天文台)


→ Back to HOME