国立天文台は「うその満月」の日時を発表している?
国立天文台のトップページ
からリンクされている
「ギャラリー」のサイト
にある「月」の写真で「満月」と題する
画像(116KB)
または
画像(408KB)
に次の説明がある:
「この画像を撮影した直後に部分月食が起った. すなわち,この画像は,月面上に日陰がみえない本当の満月である.」
この画像は2001年7月5日21時03分(JST)に撮影されたものということであるが, ここでいう,「本当の満月」というのは,いったいどういう意味であろうか?
国立天文台の「よくある質問」の中の
「質問2-5)満月や新月の日を知るにはどうすればいい?」
の回答には
「暦要項の中の『朔弦望』という項目を開くと、1年間の新月(朔)・ 上弦・満月(望)・下弦の日付と時刻を知ることができます。」
とあり,また,国立天文台暦計算室の
「こよみ用語解説」のサイト
にも
「望(満月)=黄経の差が180°」
とある.つまり「満月」は「望」と同義ということである. ここで「黄経の差」というのは,そのサイトの上の説明にあるように, 「月と太陽との視黄経の差」という意味である.そして,国立天文台が発表した
2001年の暦要項
を見ると,上の画像が撮影された時刻の直後の2001年7月6日00時04分が望である. つまり,2001年7月6日00時04分が(月食の最中で月は欠けているとしても)本当の満月で, 上の画像が撮影された2001年7月5日21時03分はまだ本当の満月にはなっていないはずである. ところが,「ギャラリー」では2001年7月5日21時03分が本当の満月だと主張している. 「ギャラリー」の説明を信用するなら, 国立天文台が暦要項や理科年表などで発表している「望」すなわち「満月」は「本当の満月」ではない, つまり,国立天文台は「うその満月」の日時を皆さんにお知らせしているということになるのではないですか?
上記画像の説明には「月面上に日陰がみえない」とあるが, 月から見た太陽と地球の方向が少しでもずれていれば地球から見て月面上に日陰が見えるはずである. 実際,上の画像が撮られた2001年7月5日21時03分の時点では月から見た太陽と地球の中心間は 1.5°も離れている.だから「月面上に日陰がみえない」という説明も問題である. 実際問題として,月面上に日陰が見えない月をみるためには, 月から見た太陽と地球の方向が一致していなければならないのだが, そうなると必ず月食になってしまう. つまり,地球上から「月面上に日陰がみえない」月を見ることは不可能なのである.
相馬 充 (国立天文台)
(2015年3月29日記)
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