朔望月の長さと満月の月齢



 地球の周りの月の軌道は大雑把には離心率0.055の楕円であるが, 太陽や惑星の引力の影響で,実際には月はかなり複雑な運動をしてい る.そのため,新月から次の新月まで (朔望月) の長さや新月から 次の満月までの日数 (満月の月齢) は一定でない.平均値は朔望月が 29.53日,満月の月齢が14.77になるが,実際には,これらがどのような 範囲にあるのかについて,ときどき質問を受けるので,ここで解説しておく.

 なお,新月 (朔) とは太陽と月の視黄経が一致するとき,満月 (望) とは 太陽と月の視黄経の差が180°になるときである.

 新月から次の新月までの長さと新月から次の満月までの長さを 1601年から2400年までの800年間について実際に調べた結果は次のとおり.
 新月から次の新月までの長さは
最短:29日06時間31分30秒(29.27日;1708年06月18日に始まるもの)
最長:29日19時間58分58秒(29.83日;1610年12月15日に始まるもの)
また,新月から次の満月までは
最短:13日21時間38分43秒(13.90日;2312年07月06日に始まるもの)
最長:15日14時間42分51秒(15.61日;2391年12月26日に始まるもの)
であった.

 満月が太陰太陽暦の何日になりうるかは,上記の時間からすぐに分 かり,14日~17日である.太陰太陽暦では新月を含む日を1日にするからである. 満月が15日~17日というのはわりと頻繁に起こっている (満月が十五夜の 翌日とか翌々日というのはよくある) が,14日に満月というのも確かに あって,その一例は1942年9月の
新月:09月11日00時53分
満月:09月24日23時35分
(日本標準時) で,この時の満月は中秋の名月の前日であった.

 各世紀ごとに新月から次の新月までの時間の最短と最長,新月から 次の満月までの時間の最短と最長を示すと次のようになる.括弧内の 年月日はその期間の始めの年月日である.最短と最長の値の世紀ごとの 変化は割合小さいことが分かる.

 世紀     新月から新月         新月から満月
      d h m s  d h m s   d h m s  d h m s
      (年/月/日)  (年/月/日)   (年/月/日)  (年/月/日)
  17   29 06 32 05 - 29 19 58 58  13 21 38 59 - 15 14 40 53
     (1690/06/07) (1610/12/15)  (1604/06/27) (1683/12/18)
  18   29 06 31 30 - 29 19 58 02  13 21 41 02 - 15 14 39 23
     (1708/06/18) (1787/12/10)  (1763/06/11) (1701/12/29)
  19   29 06 33 39 - 29 19 57 28  13 21 41 19 - 15 14 40 11
     (1885/06/13) (1805/12/21)  (1887/06/21) (1888/01/13)
  20   29 06 35 18 - 29 19 54 52  13 21 39 04 - 15 14 36 16
     (1903/06/25) (1973/12/25)  (1967/07/08) (1906/01/25)
  21   29 06 35 05 - 29 19 46 50  13 21 44 42 - 15 14 42 29
     (2053/06/16) (2017/12/18)  (2029/07/12) (2046/12/27)
  22   29 06 42 00 - 29 19 54 26  13 21 42 22 - 15 14 33 06
     (2115/06/22) (2150/12/19)  (2126/06/21) (2196/12/20)
  23   29 06 37 32 - 29 19 45 54  13 21 41 43 - 15 14 41 58
     (2248/06/22) (2204/01/03)  (2294/06/24) (2233/01/11)
  24   29 06 40 15 - 29 19 51 30  13 21 38 43 - 15 14 42 51
     (2301/07/07) (2380/12/27)  (2312/07/06) (2391/12/26)


相馬 充 (国立天文台)

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